イントロダクションINTRODUCTION
2020年、無名の新人監督の作品が第33回東京国際映画祭でプレミア上映され、同年の第21回 TAMA NEW WAVE コンペティションにてグランプリと男優賞に輝いた。写真機が発明された時代、遺体を写すという行為が世界各地で発生したーー。本作は、監督・主演を務めた小山駿助が上記の歴史的事実に触れたことから企画が始まった。現代の日本で、現実的に私たちの世代がそのような切実な必要性を持つとしたら、それはどのような人物か。また、そのような絶望に打ちひしがれている人間に相対した場合、私たちにはどのようなことが可能なのか。この特異な題材に正面から取り組まれた物語は、各映画祭での上映時、幅広い年代に支持された。 出演は、日本映画として46年ぶりのカンヌ国際映画祭短編部門出品作となった『ふたつのウーテル』主演の澤田栄一。短編映画『viewers:1』にて話題となったブルドッキングヘッドロックの橋口勇輝、文学座の武田知久、劇団晴天の白石花子と、若手の精鋭が脇を固める。 最愛の人の死とどう向き合うかという問題に端を発し、やがては現代を生きる若者が世界と格闘する姿を繊細に、しかし力強くスクリーンに映し出す。社会が災厄に見舞われるこの時代においても、映画はなお量産され続けている。その大河の如き本数の中の一本として小さな光を放つこの映画を、是非自身の目で発見し、世に放たれた小山駿助の才能を楽しんで頂きたい。
ストーリーSTORY
写真館のアシスタントである山下は、赤ん坊の遺体の撮影を人づてに依頼され、良い経験になるかもしれないと依頼を受ける。赤ん坊の父親であり依頼主でもある安斎は、始め若い山下に戸惑うも、正直で実直な山下に心を許し、撮影が始まる。 山下はほんの少しでも利己的になっていた自身を恥じ、誠心誠意彼ら家族のために撮影に取り組もうとする。遺体の状態を考えると時間がないという状況も、山下の使命感に拍車をかける。美化すべきでないという倫理観は、目の前の状況に吹き飛ばされる。 一方、安斎は自分が写った一枚を客観的に見て、これはもう未練なのだと、行き場を失った親としての義務感が自身を突き動かしていたことに気付き、撮影に固執する山下を止めようとする。
キャストCAST
澤田栄一/小山駿助/橋口勇輝/武田知久/竹田邦彦/細山萌子/中村安那
スタッフSTAFF
監督・出演・脚本・絵コンテ・編集:小山駿助 撮影:高階匠 音楽:中村太紀 照明:迫田遼亮 録音:澤田栄一 小山駿助 美術:田幸翔 衣装:細山貴之 助監督:田幸翔 逵真平 英語字幕:須藤英理菜 ポスター:中村友里子 プロデューサー:田幸翔 角田智之 細山萌子