百年の夢 デジタル・リマスター版
1972/スロヴァキア/67分
公式サイト
イントロダクションINTRODUCTION
16年の長きに渡って国外輸出禁止となっていた幻の衝撃作が
30年の時を経て再びスクリーンに―
老人たちの年輪が刻まれた顔、顔、顔―
スロヴァキアの山岳地帯に暮らす老人たちの日常とその人生哲学
カルパチア山脈の東側、スロヴァキア南西部のファトラ山地。この痩せた土地で、厳しい自然条件と孤独と闘いながら、農業や羊飼いを生業として暮らす70歳以上の老人たちがいた。<人間喜劇>と名付けたからくり人形作りに熱中する男性。事故で歩けず25年間、膝を使い暮らしてきた男性。共に暮らすめんどりに聖書を読み聞かせる老人…… 。「文明社会」から遠く離れた処に暮らし、彼らは自らの内なる自由をいきいきと生きていた。彼らにとっての愛や家族、夢、労働や人生の意義が語られ、生と死についての黙想とでも言うべき、哲学的世界が映し出される。
本作は1972年、共産党政権下のスロヴァキア共和国で製作され、完成後16年間の長きに渡り当局により輸出禁止とされていたドキュメンタリー映画である。輸出解禁後の1992年、日本でも劇場公開が実現し話題となった。今回は待望のデジタル・リマスター版での公開となる。
ストーリーSTORY
ドゥシャン・ハナーク監督のメッセージ
親愛なる友人のみなさん 『百年の夢』は、素朴で、賢明で、内面的に強靭な人びとについての映画です。この人びとはスロヴァキアの人里離れた山のなかで、ヨーロッパ中部の文明の周辺地域で暮らしていました。私は彼らのもとに通って、その話に耳を傾けました。彼らはみなその内部に、未知の宇宙を持っていました。彼らはみなその内部に、内なる光のようなものを持っていました。貧しい暮らしをしている人びとでしたが、だれもが人生を見事に生き抜いて、その秘密を知っていました。人生でいちばん大切なことは何でしょうか?この映画は全体主義体制のもとで長いあいだ禁止されていて、後になって上映されたところではどこでも、アメリカでもヨーロッパでもアジアでも、理解したいと語った人びとのもとで大きな成功を収めました。どうしてなのか私にはわかりません。おそらく、平凡な人間でも真の人格者になることができるからであり、この映画のなかでみずからの人生を生きている人びとは、その内部になにか普遍的なものを持っているからなのでしょう。私が思うに、それは彼らのむきだしの人間性と、内面的な自由です。日本の観客のみなさんに私の映画を見ていただけることは、私にとって名誉なことです。みなさんに大きな喜びがありますようにお祈りしています。
スタッフSTAFF
監督・脚本:ドゥシャン・ハナーク 撮影:アロイス・ハヌーセク 音楽:G・F・ヘンデル/ヴァーツラフ・ハーレク/ヨゼフ・マコヴェツ スチール:マルティン・マルティンチェク/ウラジミール・ヴァヴレク 撮影協力:ヤン・シュヴァンクマイエルュ